「宣伝会議賞は試作の場」と言われている。
「実務で使えないような、ぶっこわれた強烈な表現を見たい」と
おっしゃる審査員もいる。...
だが、下ネタやタブーとされている言葉を使えば
いいというわけではない。
それらは表面上は目を引いても、中身がなければ意味がない。

前回の宣伝会議賞でサランラップの課題だったが、
「自殺のはずがない、だってラップをかけてるんですよ」
というコピーが賞をとった。
そこで、「自殺」という、
実務の広告制作ではまず使わない言葉を用いた点は評価されたが、
けどこのコピーはサランラップ以外の別のラップの広告にも
そのまま使えるよな、とマイナス面を指摘された。
その点がなければもうひとつ上の賞もといった意見も
あったそうだ。

そのとおり、その商品・サービス・会社のオンリーワンではない
競合商品、競合他社に流用できるようなコピーが、
広告としてどれだけの意味を持つというのか。

だがしかし、これまでの宣伝会議賞は、
そんなどこにでも使えるコピーがやたらに多かったよね。
プリン・保険・セキュリティシステム・チョコレート、
その商品、サービス独自の特性を表したものはなく、
他社のプリンや他社のセキュリティシステムの広告にも
そのまま流用できるものばかりだった。
協賛企業賞として広告主が選んだコピーは、
独自性の点では審査員が選んだコピーよりも上だと思う。

で、「独自性があり、人を動かす力のある強いコピー」だが、
十分な取材をして、その商品やサービスの深いところまで
もぐって、息が続かなくなってもがいているうちに
生まれてくるそんな言葉だというイメージがある。
水面をちゃぷちゃぶしている程度では、
強い言葉など生み出すことはできないのだ。