広告制作においていちばん大事なのは、
依頼先の要望に応えたものを作ることである。
それができていないと、
「何を聞いてたんだ」と怒られることになる。
それだけではすまず、...
「言ったことを正確に理解できないだめなやつ」とか、
「指示したことに従わない横着なやつ」と思われてしまう。
そうなるともう仕事をもらえなくなる。
だから、依頼先が
「サランラップが他のラップにくらべて優れている点」を
コピーにしてほしいと希望されているなら、
ラップの活用とか、ラップをめぐるドラマではなく、
他社製品とはこう違うんだという差別化を
文章にして、それをまとめた一文をキャッチコピーにする。
あるいは、「プリンといえば森永」と希望されるなら、
プリンそのもののコピーではなく、
プリンは森永がいいよと強く訴えかけるコピーを書く。

そうしないと、
「ラップの広告ではなくて、サランラップの優位性だよ」
「これじゃ、どこのメーカーのプリンにも使えるだろ」と
怒られてしまう。
そして、それだけでは終わらず、
「使えないやつ」「仕事ができないやつ」と思われる。

実務ではそうだ。
しかし、公募賞ではそのへんがいいかげんになっている
ことが多々見受けられる。
協賛企業が選ぶ賞ではさすがに課題のテーマどおりのものが
選ばれているが、審査員が選ぶ賞では、
この人たちは課題のテーマを理解して選んでいるのかと
疑わしくなるような作品が入賞していることも多い。
確かにコピーとしては優れているが、
依頼先の希望する内容とはかけ離れたものであるとか、
そういった意味だ。

今回の宣伝会議賞は課題社1社あたりの応募本数に
上限がつけられた。
応募する作品をしぼりこむ必要ができたわけで、
応募作品の質を上げるためという意図があるものと思う。
しかし、それをすることによって、冒険ができなくなる。
課題の意図どおりに作ったストライクのものも出すが、
大きく外れた暴投も混ぜて出そうといったことが
やりにくくなる。
全部ストライクゾーンめがけて投げるしかないなと。
課題のテーマから大きくはずれたものは投げにくい。

応募本数の上限設定は審査員側からの要望だと思うが、
そのような要望を出すのであれば、
審査をする姿勢もあらためてほしい。
コピーは芸術作品ではなく、商業広告である。
依頼先の希望がコピーに落とし込まれていなければ、
どんなに優れた表現であれ、それはコピーとはいえない。