「広告は芸術作品ではない」。
最初に勤めた代理店でそう教わった。
それは基本中の基本であり、私はさらにそれに加えて
「自己表現の場ではない」「遊びの場ではない」と考えている。
広告は、広告を出す広告主のものだ。...
広告主の商品やサービス、あるいは会社や団体の存在を
消費者に広く伝えるものであって、
広告の制作はそれをより効果的に行なう目的でなされるべきだ。
そこで芸術性がどうだとか、制作者の個性を表現するとか
創造性があーだこーだとかのたまうことは
勘違いもはなはだしいぞと思っている。

広告主は費用をかけて広告を作り、世の中に発信する。
そして、そのかかった費用以上の収益を期待する。
当然のことだ。
特に中小零細企業や個人商店にとっては大きな問題である。
予算はあまりかけられない、しかし費用対効果は期待したい、
その効果によって業績が大きく変わることだってあるのだ。

私はもともと営業職だった。
会社は当時リクルートの専属代理店で、
後に自社で運営する求人サイトを作り、
今は国内でもトップを争う位置にいる会社である。
その会社で求人情報誌の営業に携わり、
その後会社を移ってからは制作職を兼任し、
さらに独立してから後に制作専任になったが、
今も机上の視点ではなく、現場での視点でものを考えるくせがある。

求人広告を出した際、大きく有名な会社は社名だけで応募が集まる。
しかし、小さな会社は知名度がないのでそうはいかない。
そこで、できるだけ多くの情報発信が必要になる。
どういう会社でどういう仕事をしていて、どんな人材が必要なのか、
あと、募集の背景やその他いろいろあれこれ、
多くの情報を提供することで、その会社への理解度を深めてもらい、
共感できる人に応募してもらい、採用を成功させましょう、
そんな内容をたどたどしく語り、
その場で即興の原稿企画案を考えて説明し、
そこで「よし、掲載しよう」と言ってもらえなかったら
帰って企画書を書いて送りつけるか次回持って行くかをした。
口下手で内向的な人間が営業でやっていくには
何か武器を持たないとだめだ。
なので私は求人広告について勉強しまくって、
原稿企画力を高めることでその活路を開いた。

話がそれたが、そんなわけで私は、
広告を作る、コピーを書く際に、広告主のことを第一に考える。
広告主の希望を聞き、それに応えるべく動くという
現場でのやりとりをずっとやってたからね。
切実な希望を聞いて、なんとかしようと奮い立ち、
知恵をしぼって原稿の企画を進めるといった展開だ。

大企業とか、有名な商品・サービスであれば、
細かい説明はなくてもいいと思う。
雑誌にしてもポスターにしても、
そのスペースの中央にコピーを1行か2行すっと書いて、
コピーよりも全体のデザインで目をひくといった作り方でもいいよね。
けど、知名度も何もない中小零細企業や個人商店は
それではきつくないかと考えてしまうのよ。
場合によってはデザイン性が効果的だと思える時もあるけど、
ここぞの勝負をしたい時にはアピールポイントをひとつ決めて、
それを中心にしてできるだけ情報を入れたほうがと思うのよ。
たぶん広告主の側も
「こんなにスペースあるのにもったいないやないか」と
思うかもしれないね。