広告原稿を書くにあたって最も重要視しているのは
「他社・他用品との差別化」である。
その会社・商品・サービスのオンリーワン、
あるいはそれに近い表現の内容にしたいと考えている。
なので書いたコピーが、社名や商品名を変えれば
同業他社、同種商品の広告としてそのまま流用できる、
そのようなことになるのはいやだ。

その考えかたをたたきこまれたのは、
大学卒業後最初に入った会社である。
そこは当時求人広告専門の代理店で、R社の専属代理店だった。
営業職として入社した私は、求人情報誌の売り込みかたよりも
取材の進めかたを重点的に教わった。
募集する職種・給与額・待遇その他のデータ的なことから、
その仕事の内容、なぜ募集をするのか、会社の今後のビジョン、
その他あれこれ、多い時には大学ノート5~6ページ分くらいが
ぎっしりうまるくらいの聞き込みをした。
そしてその内容を制作部のスタッフに説明しながら、
どういった内容の原稿にするかを相談した。

当時よく社長から言われていたのが、
「君たちはスペースブローカーではない、プランナーだ」である。
売るものは広告スペースではなく、
人材の採用を果たせる広告企画である、そのような考えかただ。
取材の重要性、オンリーワンを追求する手法、
それらは今も大事にしており、
広告の仕事をするうえでの血肉であると思っている。

独立するまでにいくつかの代理店に所属したが、
その会社のレベルの高さは群を抜いていた。
今その会社はR社から離れて自社媒体(求人情報サイト)を運営し、
R社を含む競合他社を抑えてトップもしくはそれに近い位置にいる。
そうなったのは掲載されている求人情報の内容の濃密さにより
信頼感と高い広告効果が要因であろう。
いくら大資本の会社が参入しても、
内容が薄っぺらであれば淘汰されていく。
生き残って拡大を続けるのは理由があるのだ。

今から思えば、何の知識もなかった白紙の状態で
最初にいい会社に出会えてよかったとありがたく感じている。
いろいろとあって1年半ほどで退職したのだが、
仕事がいやになってやめたわけではない。
そして、その短い期間で得られたものは、
広告の仕事を続けるうえでの一生ものの財産だと思っている。