広告賞に応募してみようと思い立った時、
たまたま始まっていたのが宣伝会議賞だった。

課題となっている広告主に対して、
直接の取材なしで自分で集めた資料のみを頼りにして、
広告制作を行なうその作業は、
実務の仕事に較べて不利な条件ばかりだが、
応募者はみんな同じ条件である。
そんな状況の中でどれだけいいものを作ることができるか、
あがいて、もがいて、手さぐりで作り出すことが、
実力を高める修業になると思った。

宣伝会議賞は国内で応募者、応募作品ともに最多といわれている。
それはプロだけでなく、素人さんが多数参加しているからであり、
まがりなりにもプロである自分なら、
そのような数字に関係なく上位にくいこめるはずだと、
正直言ってなめきっていた。
応募作品の制作は、自分のセオリーどおりに
まず企画をたてて、ボディコピーを書いて、
それにリンクしたキャッチコピーを書く、そのような手法で進めた。
いわば実務の制作手法で、めんどくさい手法でもある。
そんなこんなで2ヶ月で書いた作品はわずか48本。
それでもきっちりと仕上げた作品だから、
必ず評価されて入賞するだろうととことんなめていた。
そんな気持ちがあるにもかかわらず、
1次審査を1本も通らなかったらコピーライターの肩書をはずす、と
SNSで公言した。

結果は、1次審査通過が1本のみ。
その通過した作品も、だらけ半分で書いたテレビCMのコンテであった。
魂をこめて作った他のコピーはすべて1次審査さえ通過しなかったのだ。
その事実はさすがにショックが大きく、
1次審査通過者発表記事が掲載された宣伝会議誌が発売された
その年の2月1日、惨敗の結果に傷ついた心をいやすべく、
オフィスでまるで現実から逃げるかのように仕事に集中した。

広告賞はあなどれない、なめきっていて自分が恥ずかしい。
しかし、これで終わりではない、修業は始まったばかりだ、
じゃあ次だ、次、と
たまたま見つけたラジオCM賞に応募することにした。

しかし、ラジオCMはそれまで書いたことがない。
どう書けばいいんだろう、
とりあえず見よう見まねで書いてみた。
応募要項に「20秒CM 100文字以内」とあったが、
SE:とか、NA:も文字数に入れるのだろうかと迷ったり、
100文字をオーバーしてるから、セリフを短くしようとか
今から思えば、そんなことで悩んでいた自分が恥ずかしい。

その後、字数は関係ないからとにかく決められた秒数に
おさまればいいのだと知り、
字数にこだわることなくCMを書くことにした。
書き続けているうちに、なんとなく20秒の感覚が身についた。
秒数は俗に「尺」とよばれるのだが、
その20秒の尺の感覚が身につき、
字数はちょっと多くなったけど
20秒に収まるななどとわかるようになった。

そして、書き続けているうち、
その年の夏、初めてラジオCM賞で入賞した。
宣伝会議賞を含めて5つめに挑んだ広告賞での入賞であった。

( 続 く )