以前は、公募の賞やコンペに積極的に参加していた。
公募賞はラジオCMのコンテストが多かったが、
コンペはネーミングやキャッチコピー募集が多かった。
オリエンテーションもクライアント取材もなく、
資料を集めて制作を進めて、作品を応募して、採用されればそこで完了となるものがほとんどだ。
それはそれで打ち合わせ等の時間がかからないから楽といえば楽だが、
頭の中でイメージしただけの作品を出すことはない。
それに関する資料をできるだけ集め、つつきまわしていじくりたおして、
そのうえでひねり出してしぼり出す。
小さな案件であろうとなめたことをするつもりはない。
ネーミングは特に長く使われていくものであるし、
「なんとなく思いつきました」といった提案など絶対にしたくないねっ。

しかし、時にいいかげんな遊び心でつけた名称がその意に反して
すんなりと受け入れられて定着していくこともある。
たとえばかつてホンダの人気原付車であった「ダックス」であるが、
(現在は生産中止)
これは当初開発段階において試作品を前にして
車名を考えていた社員の1人が冗談半分で
ダックスフンドをもじった「ダックスホンダ」と言ったことが
ネーミングの原点であったといわれている。

私が運営しているボクシングジムにおいて
「女王様のマス(マスボクシング)」という練習方法がある。
男女の実戦練習であるが、女性は攻撃のみ、
男性は防御、すなわち打たれるのみになる。
そしてその様子を称してつけた名前が
「女王様のマス~女王様のパンチをお受け~」である。
 正直なところ、思いつきでちゃらけてつけた。
まったくもってふざけたバカなネーミングであると自負している。
しかし、この練習が開始されてから以後何年も使われ続けており、
すっかり定着している様子である。
時にはほんとに堅苦しく考えずに、ちゃらけ半分で考えて練りだした案のほうが
けっこういいものができるのではないだろうか。

もう何年も前のことだが、主宰者がお題を出して、
それに対するバカなネーミングを募集するサイトで、このようなお題があった。
「写真を撮られると魂がぬける気がして怖くなる現象」。
そして、最高得票のネーミングが、
「写るんdeath」。
見事としかいいようがない。
ああ私もこのような絶妙なネーミングができるコピーライターになりたい。